Cascina Tiole/カッシーナ・ティオレ

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ピエモンテの伝統的バローロ驚愕の造り手、カッシーナ・ティオレ

現当主マッスィモ グラッソは3代目、1940年代に彼の祖父がこの土地を手に入れ、ブドウ栽培を開始。畑はモンフォルテ ダルバの中でもBussiaブッシアに次ぐ面積をもつPernoペルノにあります。ペルノを代表する造り手といえば、同じSt.Stefanoサントステーファノの畑を持つRocche di ManzoniロッケディマンゾーニやGiuseppe Mascarelloジュゼッペ マスカレッロと隣接した畑を持っており、さらに対面する畑はAldo Conternoアルド コンテルノのCru Bussiaの畑。車では谷を迂回するため7㎞以上あるものの、徒歩では10分かからずにたどり着けると笑うマッスィモ。標高350~380m、東~南東向きの高樹齢の畑(Barolo)と、隣接する西~南西向きのSt.Stefanoサントステーファノ。隣り合う土地でありながらその地質は大きく異り、土壌は強い石灰質と粘土質、部分的に砂質も含まれており、モンフォルテ特有の緻密な泥灰土の層と、堆積物土壌が豊富な土地。さらにSt.Stefanoサントステーファノは砂質、シルトが豊富で堆積岩が多くみられる土壌。

畑は1か所にまとまっていて合計7ha。(うちSt.Stefanoサントステーファノ1.5ha)樹齢は古いもので、彼の祖父が1940年代に植樹した80年を越える区画、父アルマンドの植樹した40年代が中心。そして一部マッスィモが再植樹した部分(2010~2018)。バルベーラは全体で0.6haほど、古い樹はほとんど病害(フラヴィシェンツァ ドラート)によって死んでしまいました。ごくわずかにSt.Stefanoサントステーファノに数十本残っているといいます。栽培の中心はネッビオーロとなります。さらにクローンについても古く、ネッビオーロ ミケやネッビオーロ ロゼが多く残っており、樹齢80年の区画では台木を使わず自根で接ぎ木(プロヴィナージュ)されたブドウ樹も残っていることに驚きます。祖父アルマンドの時代はロゼが主流で、彼はランピア、ミケ、ロゼを順番に植えました。病気などの影響で再植樹したこともあり、現在では、St.Stefanoサントステーファノはミケが多め。Pernoペルノ(メインの畑)ではランピアとロゼが中心になっているといいます。ヴィンテージの特徴によって異なるものの、やや色調が淡くなりやすい事と、香りの成分が豊か、芳香性の高さは、ミケ、ランピアによる影響もあると考えられます。
畑では小型のトラクターは使うものの、多くの仕事は手作業中心に行われており、非常に几帳面で誠実なマッスィモの性格がよく表れていて、すべてのブドウ樹に目が行き届いている素晴らしい畑。畑で用いるのは、毎年最低限の銅と硫黄物のみ。表土は2年に一度、収穫後の土壌環境を見た上で1畝おきに行う、ただ表面10cm以上は行わず、極力土地の持つ環境、バランスを優先したアプローチ。ペルノとブッシアに挟まれた緩やかな斜面は、常に風の通り道にあたり、病気やカビのリスクから自然に守られる環境が整っている。高品質のネッビオーロが栽培できる環境という事はすでに証明されているといっても過言ではありません。


収穫は、ブドウの成熟を見極めることを徹底。バルベーラで9月末、ネッビオーロに至っては10月中旬~べ下旬まで収穫を遅らせるのが基本、年によってはそれ以上に遅らせることも当然と語る彼。「自分が子供のころ(1980~)は収穫は11月を越えることが当たりまえだった。それだけこの40年で環境が変わっているのは事実。それでも、その環境下でネッビオーロは少しでも長く樹上で成熟されるき」、そう言い切るマッスィモ。さらに言うと、現在でも収穫されるブドウの半数以上はそのまま販売するか、ボトル詰めせずスフーゾ(量り売り)としています。当然ながら、自分で醸造を行うブドウはもちろん最大限に樹上で成熟し、最高のブドウを厳選した上で自分のカ
ンティーナに運び入れます。「(カンティーナの)スペースがないから、多くのブドウは量り売りにするしかない。だからこそ自分たちで醸造、ボトル詰めするブドウは、その中で最も良いものにしちゃうよね」、と笑う彼。昨今のバローロの価格高騰により、量り売りであっても高い値が付くネッビオーロ。量り売りは彼らにとっても生活を支える重要な部分でもあります。
醸造については、ブドウの素材の良さを尊重したシンプルな醸造。除梗したブドウはステンレスタンクにてアルコール醗酵を行い、バルベーラ、ランゲ ネッビオーロで約2週間、バローロは3~4週間ゆっくりと時間をかけて行います。伝統のセメントタンクを用いない理由は、よりクリアな状態でスムーズにアルコール醗酵~マロラクティック醗酵を行う事を意識しているから。「ワインとして完成(安定)するためには、マロラクティック醗酵をスムーズに、そして完全に終えることが不可欠。自分はどうしても収穫が遅くなってしまうため、冬を迎えて途中で止まってしまう可能性が高い。もちろんそれは当然の事だけど、自分のように少量しかワインがない場合、1次醗酵を終えて温まったワインが、そのままスムーズにマロラクティック醗酵を迎えるには、ステンレスタンクがちょうどよい」、そう話すマッスィモ。バローロについてはすべて大樽2000~3500Lという大樽で熟成。ネッビオーロがバローロに至るために、最も重要なものは「時間」。大樽で長い時間を費やすことはもちろんですが、それと同様にマッシモが重要視するのは、ボトル内での熟成。通常のバローロで30~36カ月程度、St.Stefanoはその特性からあえて大樽での熟成を24~30か月と短く、ボトルでの熟成期間を長く取っています。
バルベーラやランゲ ネッビオーロでも最低12カ月以上のビン内での熟成期間を取ってからリリース。

バローロはもちろんですが、すべてのワインに通じる果実の純粋さ、ストレートな果実味に心を奪われます。そして時間とともに開いてゆく美しさ、そして一番に感じるのは、マッシモの節々に感じる几帳面で真面目さを感じる味わい。バローロという名前である以上、どうしてもワインに「偉大さ」を求め意識してしまうのは、当然だと思います。しかし、ティオレのバローロには、もちろん偉大さを全く感じないワケではありませんが、それ以上に親しみやすさ、シンプルな美しさ、身近な魅力を感じるバローロ。祖父、父の代より収穫したブドウの半数以上はそのまま量り売り。残ったブドウで醸造しますが、その中でも半分近くはボトル詰めせず量り売り、「選りすぐりの最も良い部分だけをボトル詰めする」、という徹底的に選別された素晴らしいバローロ。ボトル詰めしたワインのほとんどは、古くからの顧客の中で取引されていて、これまでほとんど市場には出回ってこなかったというのも納得できる味わいです。
昨今の高騰し続けるバローロの中で彼らは、ある意味「時代に取り残された」存在、素材の良さ、几帳面で勤勉な畑での仕事、伝統を守りつつも合理的、そして何より時間を費やしたワイン造り。あまり良い言い方ではないかもしれませんし、そこだけを見て欲しいわけではないのですが、、、汗。まるで10年前から時が止まったかのような、市場や流行に左右されないその価格に、衝撃を覚えます。基本的に生産量も少なく、初輸入のため、入荷数は決して多くありませんが、バローロという名前に見合った素晴らしいポテンシャルと、素直な魅力、素材そのものの良さを感じるワイン。改めてバローロという土地の可能性を実感できる素晴らしい造り手です!

(輸入元より転記)

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