Tinessa/ティネッサ

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偉大な生産者たちに師事、カンパーニャのライジングスター

カンパーニャ州出身のマルコ・ティネッサは、経済学を学び、ミラノで金融業界に身を置いていた。30歳頃にワインの魅力に引き込まれ、持ち前の行動力と社交性でピエモンテやブルゴーニュを中心に数多くの生産者を訪ね歩きます。ブドウ栽培や醸造について、シャトー・ラヤス、コシュ・デュリ、ソルデーラ、フランク・コーネリッセンなど名だたる造り手たちから学び、自然と調和したワイン造りの本質を少しずつ理解していきました。やがて、自らもワインを造りたいという想いが芽生えます。ただし、彼はワイナリーの家系でもなければ、ブドウ栽培を行う家族や親戚もいません。そんな中、知人の紹介で、故郷から約50km離れたイルピニア地方のモンテマラーノにある高樹齢のブドウ畑を入手することができました。畑でのアプローチに関する知見はあったが、醸造設備が手元にありません。そこで頼ったのが、面識のあったシチリアのナチュラルワイン界の第一人者、フランク・コーネリッセンでした。「場所がないなら、うちでワインを造っていいよ」という想定外の申し出を受け、2007年からの10年間、収穫したブドウをシチリアに運び、フランク・コーネリッセンのサポートを受けながらワイン造りを開始しました。

高樹齢のフィアーノとアリアニコの畑から、それぞれ1種類の白ワインと赤ワインを造り始めます。ワインの名はOgnostro(オニョストロ)。カンパーニャの方言で”インク”を意味し、アリアニコの濃く深い色合いからインスピレーションを得ました。タウラージDOCGでは最低3年の熟成(うち1年は樽)が義務づけられているが、マルコは師であるフランク・コーネリッセンから学んだ”ブドウ本来のピュアな味わいを表現する”という哲学のもと、フランク・コーネリッセンと同様、樽は一切使いません。発酵と熟成にはアンフォラやガラス容器を用います。「樽の風味はワインの邪魔になると考えている。だからこそ、最良のブドウを育てることに全力を注ぐんだ」と語ります。徹底した低収量(25 hL/ha)と、熟しても酸を保つというアリアニコの品種特性を活かし、ブドウの完全な成熟を待って11月に収穫することも多くあります。2017年、フランクのセラーが手狭になり、新たな醸造拠点を探す必要に迫られたマルコに手を差し伸べたのが、ピエモンテの名門カッシーナ・フォンタナのマリオでした。「それなら、うちで造ってもいいよ」と再び偉大な師に導かれる形で、翌年から彼のセラーで醸造を行うことになります。その後もミラノの自宅で仲間とワインを仕込むなどの試みを重ね、2020年には念願の自前セラーを畑近くに確保。2021年ヴィンテージからは、ようやく畑と醸造所の一体運用が実現しました。

マルコは、近くで偉大な造り手たちの姿を見てきた経験から、ワイン造りが農業であるという根本に立ち返る必要性を痛感しています。「ここ20年ほどで、農薬や化学産業は大きく進化しました。今ではどんな土地でもブドウを育てることができます。でもそれは、本当に良いことなのか疑問に思っています。化学処理や機械的加工でワインの香り・味・色が自由に変えられてしまいます。市場ニーズに応じて防腐剤を加えたり、低温殺菌することも可能です。しかも、そうした加工内容をラベルに記載する義務はありません。こうした流れの中で、本来ワインが持っていた“テロワール”の個性は、どんどん失われていくように感じているんだ」と現代のワイン産業に対するジレンマを語ります。そのため、マルコは地元に根ざした本物のブドウ栽培に立ち返りたいと考えています。その土地で歴史的に適応してきた固有のクローンを使い、畑での徹底的な作業を通じて農薬や化学肥料を排除します。


結果的に、ワインの工程でも化学添加物を極力使わなくて済むとマルコは考えます。「醸造の過程でもできる限りニュートラルでありたいと思っている。野生酵母を使用した自発的な発酵から始まり、セラミックのアンフォラやコンクリートタンクなど、ブドウやテロワールに余計な影響を与えない容器を選ぶ。そして必要に応じて、発酵後にほんの少しだけ亜硫酸を加えます。これらはすべて、その年ごとのブドウの個性を最大限に引き出すための工夫なんだ。」
現在マルコは6haの畑を所有。「ワイン造りは自然の一部だから他の自然と繋がっていることが大切。モノカルチャーは好きじゃない」と畑の周りには12hhaの森が広がります。

(輸入元より転記)

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